同窓生の広場






コラム「南風」(琉球新報掲載)より
第7回 冊封使歓迎料理
那覇高15期  安次富 順子

 二〇〇〇年に開催された沖縄サミットの折、テレビ朝日から依頼を受け、冊封使歓迎料理の制作をしました。大きな仕事であると同時に大変難しい仕事なので、少し躊躇しましたが、中国料理の田淵光先生や沖縄調理師専門学校の調理師陣の協力を得ることで引き受けました。

 冊封使の歓迎料理は五段で構成され、一段につき四碗の料理と点心、湯があり、五段では二十碗の料理と八つの点心、五つの湯となります。資料には主材料と副材料のみで、料理法、調味料などの記載はありません。たとえば初段の主材料は、燕の巣、

 フカヒレ、ナマコ、ウズラとなっています。このほか別の段では鹿肉、鹿のアキレスけん、ジュゴン、豚足、豚の胃袋などが使われています。

 制作に当たり、琉球大学名誉教授の金城須美子先生が研究されたものに、自分の研究を加えて食材などを特定し、ジュゴンなどは代用品で作りました。また点心は私が長年取り組んできた琉球菓子の研究からすべてを再現しました。さらに盛り付けの器の調達も気を使いました。出来上がった初段から五段まで並べると豪華絢爛たるものでした。

 実際に作ってみて感じたことは、冷蔵庫、冷凍庫、調理器具のないあの時代によくもあれだけの料理を作り上げたということでした。さらに、日本国としてもてなした沖縄サミット首脳歓迎料理と比べ、同等以上のものであったと、いうことでした。

 冊封使歓迎料理は中国料理の影響を受けた五段二十碗の料理ですが、この他に「五段の御取り持ち(グダン ウトゥイムチ)」という日本料理の影響を受けた豪華な料理もあります。過去の食文化は今の私たちの大いなる財産となっています。

 今の私たちの食が、未来の財産となる努力をしたいと思います。



安次富順子 安次富 順子
  • 那覇高15期卒。
  • 沖縄の食文化研究家
  • 沖縄調理師専門学校(副校長)
  • 王朝菓子、冊封使料理の再現。ブクブクー茶の再現と普及活動。著書に『ブクブクー茶』など。
 
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