同窓生の広場






コラム「南風」(琉球新報掲載)より
第2回「ラフテー」
那覇高15期  安次富 順子
 沖縄の代表的な豚肉料理、ラフテー(豚の角煮)の真髄はとろけるような皮と肉、脂気を感じさせない脂身、そして芳醇な泡盛の香りではないでしょうか。

 皮付き豚三枚肉を茹でて角切りにし砂糖、醤油、泡盛で長時間、気長に煮込みます。中心部まで十分に味がしみ込み、そして皮がべっ甲色になり、お箸で切れるくらい軟らかくなったら出来上がりです。途中で出てくるたくさんの脂を丹念に取り除くと、脂肪分は三十%くらい抜け落ちます。ある食通が「ラフテーの脂身は脂身であって脂身でない。この微妙に残る脂がなんとも言えない美味しさだ」といった言葉が忘れられません。

 ラフテーは中国から伝えられたと思われますが、作家大城立裕先生によると「臘火腿(ラフォトェイ)」と書くとのことです。臘はとろけるようなという意味があり、火腿は中国ハムのことです。

 ラフテーは現在客膳料理ですが、昔は保存食でした。客膳にはンブシ豚、味噌煮豚などが出されており、戦前の豪華なもてなし料理「五段のお取持ち」にもラフテーは見当たらず、ンブシ豚が出されています。ラフテーがいつから客膳料理になったかは興味のあるところですが、少なくとも私が琉球料理に関わり始めた昭和四一年には、すでに客膳料理という扱いでした。

 料理は時代と共に変化します。ラフテーが薄味になり保存食から客膳料理に、そして沖縄を代表する料理になったことは喜ばしいことだと思います。本来ラフテーは砂糖、醤油、泡盛の味であり、味噌味ではありません。味噌で煮込んだものは「味噌煮豚」であり、「ラフテー」とは別物です。ラフテーと味噌煮豚を混同することなく、それぞれの味、それぞれの料理名を大切にしたいものです。


安次富順子 安次富 順子
  • 那覇高15期卒。
  • 沖縄の食文化研究家
  • 沖縄調理師専門学校(副校長)
  • 王朝菓子、冊封使料理の再現。ブクブクー茶の再現と普及活動。著書に『ブクブクー茶』など。
 
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